就労前に要確認!派遣が禁止されている業務にはどんな種類がある?
今では幅広い分野で求められている人材派遣ですが、派遣労働者が従事できない業務があることを法律で決められていることはご存知でしょうか。もしも禁止されている業務を派遣労働者が行った場合、法的なペナルティを課せられる可能性があります。そのため、派遣会社や派遣先企業はもちろん、派遣社員自身も就労する前には注意が必要です。
派遣が禁止されている業務にはどんな種類がある?
派遣会社がスタッフを派遣することを禁止している業務は、主に以下の5つに分けられます。
港湾運送業務
港湾での貨物の積み下ろしに関わる業務全般が禁止業務とされています。梱包や積み下ろす場所の清掃など、一見直接業務とは関係がなさそうな作業も禁止されているので注意が必要です。たとえ船舶で運ばれた貨物ではなくても、湾岸倉庫内の取り扱い業務は禁止されています。
建設業務
建築・修理・解体など、いわゆる建設土木現場の業務全般が禁止されています。工事などで職人さんが働いている現場をイメージするとわかりやすいでしょう。規模の大小や重機を使っているか人力かに関わらず、すべて禁止されています。また、現場での作業が禁止対象なので、建設会社での事務は派遣が認められています。
警備業務
公共施設などに配備されている警備員の派遣も禁止されています。会場内での手荷物検査や見回り、不審人物への警戒や声かけ、金品を運搬する際の監視などが含まれます。イベント等で発生する混雑時の駐車場の整理や人や車両の誘導など、一見警備には見えないような業務も、繰り返し行うことで警備業務とみなされます。
医療関連業務
医師や歯科医師、看護師、薬剤師、助産師など、病院や診療所または介護医療院などで医療に関わる業務は全般的に禁止されています。
士業務
士業務とは、弁護士や建築士、司法書士、税理士、公認会計士など「士」のつく職業のことです。これらに関わる業務への派遣は全般的に禁止されています。
派遣に禁止業務がある理由とは?
派遣を禁止する業務を指定した「派遣労働法」は、1986年に施行されました。当初は13の業務に限定して派遣を認めていたのが徐々に対象業務が拡大していき、1999年には派遣業務が原則自由化できるよう法改正され、逆に派遣を禁止する業務を指定する形に変わりました。人材不足があらゆる業界で叫ばれる中、なぜ派遣を禁止する業務があるのでしょうか。それには職種ごとにそれぞれの理由があるのです。
港湾運送業務
港湾運送業務は、波動性といって日によって仕事量の多い時と少ない時との差が大きくなる業務です。そのため、派遣を雇用しようとすると安定的な雇用が見込めなくなるため派遣社員の立場が不利になる危険性があります。そのような業務の特殊性を鑑みて港湾労働法において、労働力需給調整制度として港湾労働者派遣制度が導入されています。この制度は1986年に制定された労働派遣法より前に導入されていたため、新たな労働力需給調整制度が必要なかったので派遣が禁止されています。
建設業務
そもそも派遣では、指揮命令権が派遣先の企業に与えられ、雇用主(派遣元)が直接派遣社員に指揮命令を行っているわけではありません。ところが何重もの請負関係が発生する建設現場では、労働者を雇用する者と指揮命令する者が一致しなければならないと「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」で定められています。また港湾業務と同じく業務の特殊性から、「建設業務有料紹介事業」や「建設業務労働者就業機会確保事業」という独自の制度があるので、新たな労働力需給制度が必要ないということも理由として挙げられます。
警備業務
警備業務も建設業務と同じく請負業務なので、雇用する者と指揮命令する者が一致しなければなりません。よく「警備員を派遣する」といわれますが、これは派遣スタッフとは意味合いが違います。警備スタッフは警備会社と直接契約し、警備会社が警備契約を結んだ対象施設に派遣されて業務を行うということです。警備会社が雇用して指揮命令を出すので、雇用する者と指揮命令する者が違う派遣スタッフが働くことは禁止されています。
医療関連業務
医療関連業務はチーム医療が原則です。医療行為にあたる時にはチーム間での意思疎通が重要となってくるので、適切な人員が配置できなければ、チームの連携が乱れ、医療現場に混乱を招きかねないので派遣はふさわしくないとされています。
士業務
弁護士や税理士などの資格を保持している士業務では、有資格者個人が仕事の依頼を請け負うため、指揮命令権は自分自身が持っている形になります。そもそも労働者派遣の考え方とは合致しないため、派遣による業務は行われません。
派遣禁止業務には例外がある?
これまで派遣には禁止されている業務があることを説明してきましたが、中には例外的に派遣が認められている業務があります。医療関連業務では、正社員を前提とした紹介予定派遣を行う場合や産前産後休暇・育児休暇・介護休暇を取得した労働者の代替として派遣事業を行うことができます。また、離島などの僻地や地域医療を確立するために厚生労働省が指定した場所にも例外的に派遣させることができます。
今やさまざまな業種で活躍している労働者派遣ですが、とくに専門性が高いもの、技術力が必要な業種は派遣が禁止されているところがあります。一見すると業務に直接関わりがなさそうな作業であっても、禁止業務になっている場合もありますので注意が必要です。違反した時の罰則規定は派遣元にあり派遣労働者にはないのですが、突然職を失ってしまうリスクがあります。こうしたトラブルに合わないよう、就労前にしっかりと確認しましょう。